トイレは大きく「タンク式」と「タンクレストイレ」の2種類に分けられます。従来はタンクに溜めた水で流す「タンク式トイレ」が主流でした。しかし近年は、デザイン性の高さや掃除のしやすさなどから「タンクレストイレ」の人気が高まっています。
導入しようか悩んでいる方にとっては「タンクレストイレは従来の一般的なトイレと何が違うのか?」「メリットやデメリットは?」など気になる点も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、タンクレストイレの仕組みやメリット・デメリット、設置に向いているケースなどを詳しく解説します。後悔のないトイレ選びの参考として、ぜひお役立てください。
目次
タンクレストイレとは
本章では、タンクレストイレの定義や仕組みを解説します。
貯水タンクがないタイプのトイレのこと
タンクレストイレは、水洗用の貯水タンクが付いていないトイレを指します。タンク付トイレと比べると、スタイリッシュなデザイン性で人気です。
また、タンク周りの凹凸がないことから掃除のしやすさでも支持されており、リフォームや新築時に導入を検討する方が増えています。
タンクレストイレの構造と仕組み
タンクレストイレは水道管からの水圧を直接利用して洗浄する「水道直結式」という仕組みです。従来のタンク式トイレは水道管から供給される水がタンクに貯まる仕組みですが、タンクレストイレでは水道管と直接つながっています。
従来のタンクに水を溜める必要がないため、連続使用できる点が大きな特徴です。
ただし、トイレ本体に手洗い器は付属していません。必要に応じて別途、手洗い場の設置が必要になります。また構造上、水圧が十分でないとしっかり洗浄できない恐れがあるため、環境によっては設置できないケースもあります。
タンクレストイレのメリット
タンクレストイレの主なメリットを4つご紹介します。
節水効果が高い
タンクレストイレは、次の理由から節水効果が高いとされています。
- 少ない水で効率よく洗浄できる構造
- 節水効果が高い製品が多い
タンクレストイレは水道の水圧を利用して洗浄できる水道直結式であるため、少ない水量でもしっかりと流すことができます。タンク式トイレと比較すると、使用する水の量は約3分の1程度ともいわれるほどの節水効果です。
また、メーカー各社の技術によって製品自体の節水性能も向上しています。特に家族の人数が多いご家庭など、トイレの使用頻度が高い場合は大きなコストメリットになるでしょう。
すっきりした印象のトイレルームにできる
タンクがない分、タンクレストイレはスリムでコンパクトなデザインです。便器周りの圧迫感が軽減されるため、すっきりとした印象のトイレ空間にできます。
デザイン性が高い製品も多く展開されており、スタイリッシュさやおしゃれな空間づくりを目的に採用する方も多いようです。
掃除がしやすい
タンクレストイレは、凹凸が少なくフラットな形状をしています。タンク式トイレのような、タンク周りや便器との隙間の掃除が不要になるため、日々のお手入れがぐっと楽になるでしょう。
また、汚れの付着を防ぐコーティング素材や防汚加工が施されるなど、より清掃しやすいように工夫された製品も多く販売されています。忙しい毎日でも、清潔なトイレ空間を維持したい方にはうれしいポイントです。
連続で使用できる
タンクレストイレは、水道直結式でタンクに水を溜める必要がないため、連続使用が可能です。
特に家族の人数が多いご家庭や来客が多い場合など、トイレの使用頻度が高い環境ではメリットも大きいでしょう。朝の忙しい時間帯などにストレスなく使用できるのは、日常的な快適さに直結します。
タンクレストイレのデメリット・注意点
デザイン性や節水性の高さなど多くの利点があるタンクレストイレですが、すべての住宅に適しているわけではありません。また、タンク式トイレと比べてデメリットになり得る点もいくつかあります。設置条件やデメリットを解説します。
水圧が足りないと設置できない場合がある
タンクレストイレは、水道からの水圧を利用して水を流すため、住宅の状況によっては十分な水圧が確保できないケースがあります。次のようなケースでは水圧が足りないことが少なくありません。
- 戸建てやマンションの2階以上のトイレ
- シャワーの出が弱いと感じる住宅
- 築年数20年以上の配管が使われている建物
- 井戸水を活用している場合
思い当たる点がある場合は、タンクレストイレが設置できない可能性も考慮しておきましょう。トイレの設置業者に水圧調査を行ってもらえることもあるため、事前に相談しておくと安心です。
停電時は不便
タンクレストイレでは水の供給を「電磁弁」と呼ばれる蓋で制御しています。電磁弁の制御には電気を使うため、停電時には作動せず水が流せなくなる可能性があります。停電時でも通常通り使用できるタンク式トイレと比べると、不便と言えるでしょう。
なお、停電時でも使用できるタンクレストイレもあります。手動で排水できる機能が付いていたり、乾電池で使えたりするタイプです。製品を選ぶ際は、停電時のことも想定しておきましょう。
設置費用や修理コストが高い
タンクレストイレは、一般的なタンク式トイレよりも本体価格が高めです。また、手洗い場を別途設置することも多く、工事費用も高くなりがちです。
トイレの種類 | タンクレストイレ | タンク式トイレ |
---|---|---|
本体価格+工事費用の目安 | 20万円以上 | 10〜20万円ほど |
初期費用がタンク式トイレの2倍以上かかるケースも少なくありません。
さらに、タンクレストイレは故障時に部分的な交換が難しいというデメリットもあります。便器と便座が一体型になっている製品が多く、一部のパーツのみを交換することができないためです。
例えば、壊れたのがウォシュレット機能だけだとしても、便器を含めた本体まるごとの交換が必要になる可能性があります。設置だけでなく、修理や交換にかかる費用も高額になりやすい点に留意しておきましょう。
タンクレストイレとタンク式トイレの違い
タンクレストイレと一般的なタンク式トイレの主な違いを解説します。両者の違いをおさえて、自宅に合ったトイレを検討していきましょう。
トイレの種類 | タンクレストイレ | タンク式トイレ |
画像 | ![]() |
![]() |
水の流し方 | 水道の水圧で流す(水道直結式) | タンクに溜めた水で流す |
連続使用 | 可 | 不可 |
手洗い器 | 無し | 有無を選べる |
設置場所の制限 | あり | 無し |
停電時 | 使用に制限あり | 通常通り使用できる |
本体価格 | 高め | 比較的安価 |
故障時の修理・交換 | 全体の交換が必要になる場合もある |
タンクレストイレは、デザイン性の高さや節水性能などが魅力です。こだわりのトイレ空間を作りたいという希望を叶えやすいでしょう。
しかし、設置環境の制約やコスト面のハードルも存在します。建物全体の水圧が低い場合、設置できない可能性があるため要注意です。。また、手洗い器が付属されないため、別途設置を検討する必要があります。
タンク式トイレは導入コストが比較的安く、設置の自由度も高いため汎用性が高いのがメリットです。パーツごとの修理交換が可能とメンテナンスもしやすいため、コスト重視の方に向いています。
タンクレストイレをおすすめできるケース
次のような点に当てはまる場合は、トイレの選択肢としてタンクレストイレもおすすめです。
こんな方におすすめ
- こだわりのトイレ空間を作りたい
- デザイン性を重視したい
- 掃除の手間を減らしたい
- 手洗い器が別でも問題ない
- 節水効果を重視したい
- 来客や家族が多く、トイレの使用頻度が高い
手洗い器を別途設置する場合は、その分トイレのスペースも必要です。水圧などの設置条件やトイレのスペースなどの状況も考慮して検討していきましょう。
タンクレストイレに関するQ&A
タンクレストイレについてよくある疑問を、Q&A形式で解説します。
タンクレストイレにはどんな種類がある?
タンクレストイレは、各メーカーから多様なモデルが展開されており、機能性や価格帯に応じて選べるラインナップがそろっています。例として、住宅向けに人気のある代表的なシリーズを紹介します。
メーカー | モデル名 | 特徴 | 本体価格 |
TOTO | ネオレスト |
|
400,000円〜 |
LIXIL | サティス |
|
326,000円〜 |
パナソニック | アラウーノ |
|
197,000円〜 |
各メーカー、最新の製品を続々と発売しています。選択肢が多いため、洗浄方式や節水性能、機能面、掃除のしやすさなど、こだわりたいポイントを決めて比較するのがおすすめです。
タンクレストイレが「やめたほうがいい」と言われる理由は?
タンクレストイレを検討しているとき「やめたほうがいい」という声を見たことがあるかもしれません。このように言われる理由として、考えられる要因はいくつかあります。
一つは、設置条件があることです。水圧が不足している場合や手洗い場を設置するスペースが確保できないケースに対して「やめたほうがいい」という意見があるようです。また、停電時の使用が制限されることを理由にする人もいます。
さらに、タンク式トイレと比べて本体価格や工事費用が高額になりがちなため、予算とのギャップから「後悔した」という声が出ることもあります。導入前には、設置条件やトータル費用、使用環境などを総合的に確認することが重要です。
タンクレストイレの寿命は?
一般的に、タンクレストイレの寿命は10〜15年程度とされています。
パーツごとに寿命は異なりますが、タンクレストイレは一部だけを交換することが基本的にできません。そのため、寿命がきていないパーツがあったとしても、修理・交換時には本体全体の交換が必要になることがあります。
タンクレストイレは固定資産税が高いって本当?
タンクレストイレそのものが原因で固定資産税が上がることはありません。しかし、次のようなケースでは、固定資産税の加算対象になることがあります。
- トイレを2個以上設置している
- 手洗い場を別途設置している
- 間取り変更を伴うリフォームをした
トイレを2箇所以上設置している場合や、トイレ内で便器と手洗い場を別に設置した場合は加算されます。また、タンク式トイレからタンクレストイレに変更する場合も注意が必要です。間取り変更等、建築申請が必要なリフォームであれば、固定資産税が上がる可能性があります。
固定資産税は自治体の家屋調査により決定されます。リフォーム後の加算の可能性については、施工業者に確認しておくと良いでしょう。
タンクレストイレは詰まりやすいって本当?
タンクレストイレは少ない水量で効率的に流せる構造です。節水性能が高い分、一度に大量のトイレットペーパーを流すと詰まりやすい傾向があります。
詰まりを防ぐためには、次の点を意識しましょう。
- トイレットペーパーの使用量を適量に抑える
- 複数回に分けて流す
- 水に溶けやすいトイレットペーパーを使う
- 排水管の定期的な清掃・点検を行う
もし詰まりの原因がわからない場合や、ラバーカップなどの対処で改善しない場合は、専門業者に相談するのがおすすめです。
まとめ
タンクレストイレは、スタイリッシュなデザイン性や高い節水効果などで人気が高いトイレです。掃除のしやすさや連続使用の利便性など、日常生活における快適さを向上させるメリットが多くあります。こだわりの空間を演出したい方や、家族が多いなど使用頻度が高いご家庭にとっては魅力的な選択肢です。
一方で、水圧が足りない住宅では設置できないことや、停電時の使用制限、導入・修理コストの高さといった注意点もあります。
住宅環境やライフスタイルに合っているかを確認しながら、検討していきましょう。