トイレの止水栓は、普段はあまり意識されませんが、緊急時には水を止めるために欠かせない重要なパーツです。
正しく操作すれば、水漏れの応急処置や流量の調整を自分で行えることもあります。
この記事では、止水栓の基礎知識として、主な種類や設置場所、操作方法に加え、フィルターやパッキンの役割、メーカーごとの違いもあわせて詳しく紹介します。
トラブル時に慌てないために、事前に備えておきたいポイントをわかりやすく解説します。
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トイレの止水栓の種類
トイレの止水栓には主に3つの種類があります。
名称 | 画像 | 開閉方法 |
ハンドル型 |
|
手で回す |
外ネジ型 |
|
マイナスドライバーまたは水栓ドライバーで回す |
内ネジ型 |
|
マイナスドライバーまたは水栓ドライバーで回す |
ハンドル型
ハンドル型は蛇口に似た形状で、手で回すだけで開閉できます。工具を使わず直感的に操作できるため、誰でも扱いやすい仕様です。
ハンドルを回すと水量が変化し、開けると水勢が強くなり、閉めると弱まります。このため、こまめな調整が必要な洗面台などに多く採用されています。
ただし、掃除中や物が当たった際に誤って回ってしまうことがあります。意図せず動かないよう、周囲の環境にも注意が必要です。
外ネジ型
外ネジ型は止水栓の中央が突出しており、付属の専用工具やマイナスドライバーを差し込んで回すことで操作します。
通常、時計回りで水が止まり、反時計回りで開きます。
操作は比較的容易ですが、溝の形状・サイズに合わないドライバーを使うと変形・破損の要因となります。形状・サイズを確認し、合致するマイナスドライバーを備えておきましょう。
内ネジ型
内ネジ型はネジ部が埋め込まれたタイプで、外ネジ型のような突起はありません。開閉には付属の専用工具またはマイナスドライバーを使用します。
開閉方式は外ネジ式と同様で、水を止める(閉める)のは時計回り、水量を増やす(開く)のは反時計回りです。ただし、外ネジ型と比べて内部の溝が見えにくいため、操作しづらい傾向があります。
ネジの溝に工具がはまったことを手の感覚で把握し、正しい方向に回しましょう。サイズの合わないマイナスドライバーの使用はNGです。溝にしっかりはまっていない状態で力任せに動かすと、破損・変形につながります。
トイレの止水栓の場所
止水栓の設置場所は、トイレの構造によって異なります。事前に場所を把握しておくことで、急な水漏れや修理の際にも慌てず対応できます。
タンク式トイレはタンク側の壁面や床面
タンク式トイレの止水栓は、壁面や床面の見える位置に設置されています。タンクから伸びる給水管をたどると、シルバーや銅色の金属製の止水栓が確認できます。
水漏れなど万が一のトラブルに備え、止水栓の位置を確認しておきましょう。また、止水栓の周囲に物を置かないことも大切です。手や工具を差し込めるスペースを確保しておけば、止水栓を操作しやすくなります。
タンクレストイレはパネルの中にあるケースも
タンクレストイレでは、止水栓が外から見えない場所に設置されていることがあり、便器背面のカバーやパネルの中に隠れている場合があります。
また、温水洗浄便座が付いているタイプでは、水の供給先が2系統に分かれており、便器本体用と温水便座用にそれぞれ別の止水栓が取り付けられていることがあります。
このため、止水操作を行う際は、どちらの止水栓を閉めるのかを間違えないように、目的に応じて正しく見極めることが大切です。
止水栓を操作できない場合は元栓を操作する
止水栓が見つからない場合や、ドライバーなどで回そうとしても固くて動かないときは、無理に力をかけず、家全体の水を止める「元栓」を閉めて対処します。
元栓は、戸建て住宅では玄関の近くや駐車場の片隅など、地面のふた(メーターボックス)の中に設置されています。マンションの場合は、各住戸ごとに専用の元栓が設けられていることが多く、玄関脇のパイプスペースやメーターボックス内にあります。
非常時に備えて、元栓の場所も事前に確認しておくことが大切です。
トイレの止水栓のフィルターとは
止水栓に取り付けられているフィルターは、水道水に含まれるゴミや異物を取り除くための網状の小さな部品です。これにより、タンク内や電磁弁、逆止弁などの内部部品への異物混入を防ぎ、故障や水流不良のリスクを軽減します。
フィルターの設置場所は機種によって異なります。タンク内部に組み込まれているタイプもあれば、止水栓側にフィルターが取り付けられているタイプもあります。
フィルターが目詰まりを起こすと、水の勢いが弱くなったり、便器から水が流れ続けたりするなどの不具合が発生するおそれがあります。そのため、年に1〜2回を目安にフィルターの点検と清掃を行うことを推奨します。
TOTOのピュアレストの場合
たとえば、TOTOの「ピュアレストEX」や「ピュアレストQR」では、清掃のしやすさに配慮し、フィルターが止水栓側に設置されています。
「ピュアレストQR」を例にフィルターの清掃手順を紹介します。
- 止水栓を回して水を完全に止める
- 外側にあるフィルターを取り外す
- 取り外したフィルターを流水で丁寧に洗浄する
- 外したときと逆の手順でフィルターを取り付けて止水栓を開く
フィルターを掃除する際は、まず止水栓を回し、水を完全に止めます。次に、外側のフィルターを取り外し、流水で洗浄します。洗い終えたら戻して、最後に止水栓を開けて完了です。
作業中に水がこぼれることもあるため、床をウエス(布)などで保護しておくと安心です。
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トイレの止水栓のパッキンの種類
パッキンとは、水道の接続部などから水が漏れないようにするための部品です。
主にゴムでできており、しなやかに変形して金属部分の凹凸にぴったり密着し、水のすき間をふさぎます。
パッキンにはいくつかの種類があります。止水栓には「コマパッキン」や「三角パッキン」がよく用いられます。
パッキンの種類 | 特徴 | 使われる場所 |
コマパッキン | おもちゃの独楽(こま)のような形状 金属製の軸とゴムが一体になっている |
配管やバルブの軸部分 |
三角パッキン | 厚みがあり、角度がある接合部に対応 | 水道のハンドルの根元部分 |
平パッキン | 平らな形状 | 蛇口や水道管・排水管のつなぎ目 |
Uリング | 断面がUの形状で、上の部分が凹んでいる | 蛇口のパイプ部分の根元 |
Oリング | 断面がOの形(円形)をしたリング状 | 自動車や航空機の管の接続部分 |
パッキンは使用とともに劣化する「消耗品」です。目安として、およそ10年で交換が必要になります。ひび割れたり硬くなったりすると、水漏れやバルブの動作不良を引き起こすため、早めの点検と交換が推奨されます。
交換時にはメーカー名・型番・呼び径(外径)を確認してください。説明書に記載がない場合は、旧パッキンをホームセンターに持参し、店員に相談するのが確実です。
サイズ違いを使用すると、改善しないことがあるため注意しましょう。
メーカーごとの止水栓の種類を紹介
止水栓の位置や形状は、製品によって異なります。ここからはTOTOとLIXIL製品の止水栓の種類を紹介します。
※製品の型式や設置状況によっては異なる場合があります。詳しくは各製品の取扱説明書をご確認ください。
TOTO
製品名 | 画像 | 止水栓の種類 | 止水栓の場所 |
ネオレストNX | ![]() |
外ネジ型 | 壁面や床面 |
ピュアレストEX |
|
外ネジ型 | 壁面や床面 |
レストパルF |
|
内ネジ型 | 壁面や床面 |
「ネオレストNX」は外ネジ型の止水栓を採用しており、タンクレスで意匠性に優れた設計です。「ピュアレストEX」は外ネジ型、「レストパルF」は内ネジ型が取り付けられています。
LIXIL
製品名 | 画像 | 止水栓の種類 | 止水栓の場所 |
サティス |
|
ハンドル型 | 壁面や床面 |
プレアス |
|
内ネジ型 | 壁面や床面 |
アメージュ |
|
内ネジ型 | 壁面や床面 |
「サティス」はデザイン性の高いモデルで、ハンドル型の止水栓が採用されています。設置場所は壁面または床面で、施工環境によって変わります。
一方、「プレアス」や「アメージュ」では、内ネジ型の止水栓を使用しています。
トイレの止水栓の種類を把握しておこう
トイレの水の勢いが急に弱くなったり、流れが悪くなったり、水が止まらなくなったとき、まず確認すべきが「止水栓」です。止水栓を適切に操作すると、水量の調整や応急的な止水が可能になります。
そのためには、事前に止水栓の種類(ハンドル型・外ネジ型・内ネジ型)と設置場所(床面・壁面)を把握しておくことが重要です。また、付属の専用工具や、止水栓のタイプに合ったマイナスドライバーを常備しておけば、緊急時にも落ち着いて対応できます。
さらに、止水栓にフィルターがある場合は、定期的に掃除を行うことでトラブルの予防にもつながります。トイレの構造や給水方式に応じた基本知識を持っておくことが、安心して長く使うための第一歩です。
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