壁排水はトイレの排水方式のひとつで、便器とつながる排水管が壁に接続しているタイプです。マンションや公団住宅を中心にみられます。なお、現在の主流は排水管を床下に通した床排水タイプです。
本記事では、壁排水の構造とメリット・デメリットを詳しく解説します。また、トイレを交換する場合は壁排水に対応した製品を選ぶ必要があるため、排水方式の見分け方と注意点も解説します。ぜひ参考にしてください。
トイレの壁排水とは
まずはトイレの壁排水の定義や仕組み、見分け方を解説します。
壁につながった排水管から排水する方式
トイレの排水方式は、壁排水と床排水の2種類です。
壁排水とは、排水管が壁に向かって設置されているタイプの排水方式です。主にマンションや集合住宅で用いられています。
一方、排水管が便器の下、つまり床に接続されたタイプは床排水と呼ばれています。日本では床排水の方が主流ですが、壁排水の住宅もあります。
壁排水の場合、壁排水用のトイレでなければ設置できないため、トイレを交換する際は必ず排水方式を確認しておきましょう。
壁排水の配管接続方法
壁排水は、排水管の接続方向によって主に次の3つのタイプに分類されます。
接続方向 | 画像 | 詳細 |
後ろ抜き | ![]() |
便器の真後ろに排水管が接続されているタイプ |
左右抜き | ![]() |
排水管が左右どちらかに向かって伸びているタイプ |
室内排水立管 | ![]() |
トイレ室内に設置された縦方向の排水立管に接続するタイプ |
排水方向が決まっている製品もあるため、トイレ交換やリフォームの際には排水方向も確認しておきましょう。
壁排水と床排水の見分け方
壁排水か床排水かを見分ける方法はシンプルです。便器の後ろや横に配管が見えている場合は壁排水、トイレの周りに配管が見えない場合は床排水です。
壁排水はマンションなどの集合住宅でよく見られる方式ですが、戸建て住宅で採用されている場合もあります。必ずチェックしてから製品を選ぶようにしましょう。
壁排水のメリットとデメリット
壁排水は騒音を押さえられるなどのメリットがある一方、コスト面の懸念があります。壁排水の主なメリットとデメリットを解説します。
壁排水のメリット
壁排水は配管が壁の中にあるため、排水音が階下へ伝わりにくい構造になっています。夜間やマンションなど、下階への騒音が気になる環境でも、比較的気にせずに使用できるでしょう。
特に2階以上にトイレを設置する際は、床排水よりも壁排水の方が騒音をおさえられます。
また、床排水を選択できない場所でもトイレを設置できます。住宅によっては床下に配管を設けるスペースを確保することが難しいケースもありますが、壁排水であれば設置可能です。
壁排水のデメリット
壁排水のデメリットは、施工費用や配管にトラブルが起きた際の補修費用が高くなりやすい点です。配管を壁の中に通す構造上、設置時には壁に穴を開けるなどの工事が発生します。床排水に比べて工事が複雑になる分、コストもかかります。
また、排水管の詰まりや漏水が発生した際も、配管の点検や補修のために壁を一部解体しなけらばならないことがあります。作業が大掛かりになる場合は、修理費用も高額になる可能性があります。
壁排水のトイレを選ぶ際は排水高に注意
壁排水のトイレを選ぶ際は、排水高と排水管の形状を確認しましょう。排水高・排水管が合わないトイレは設置できない可能性があります。
排水高の調べ方と排水管の種類を解説します。
排水高とは
排水高とは、床面から壁の排水口中心までの高さを指します。壁排水のトイレは、排水高に応じた仕様で設計されているため、合っていないものを選ぶと、排水管とうまく接続できません。主な規格は、120mm、155mm、180mmです。
排水高は、床面から壁にある排水管の中心までの高さを測るだけで確認できます。
メーカーのカタログや製品サイトには、各トイレの排水高が記載されています。設置するトイレを検討する際は、合わせて確認しておきましょう。
排水管の形状と種類
壁排水の排水管の形状は2種類です。
排水管の形状 | 画像 | 特徴 |
10°傾斜タイプ | ![]() |
便器の後方から少し傾斜して排水するタイプ |
ストレートタイプ | ![]() |
排水管が水平に近い直線で設置されているタイプ |
便器の排水口と排水管の形状が合っていないと、排水接続部に無理がかかってしまい、水漏れや詰まりの原因になる恐れがあります。排水管の形状も確認し、適合した製品を選ぶことが大切です。
トイレの壁排水についてのQ&A
壁排水のトイレに関してよくある疑問を解説します。
壁排水のトイレの流れが悪い原因は?
主な原因は、排水管の詰まりや勾配不良です。排水管に異物が詰まったり、内部に汚れが蓄積したりすると、水がスムーズに流れなくなります。特に、配管の勾配が不適切な場合、水が逆流や滞留しやすくなり、流れが悪化します。
市販のパイプクリーナーを使用して汚れを溶かすことで、改善できる場合もあります。しかし、根本的な解決には専門業者による高圧洗浄や配管のチェックが必要です。
放置すると悪臭や漏水の原因になるため、流れに違和感がある場合は早めに業者に相談した方が良いでしょう。
壁排水のトイレの配管交換にかかる費用は?
一般的に5万円から15万円程度が相場とされています。ただし、建物の構造や配管の材質、工事の難易度によって費用は変動します。壁を一部解体する必要がある場合や、配管経路が複雑な場合など、大掛かりな作業になると30万円以上かかるケースもあります。
適切な費用を見極めるためには、事前に複数の業者に見積もりを依頼し、工事内容と金額を比較することが大切です。
まとめ
壁排水とは、排水管が壁に接続されているトイレの排水方式で、主にマンションなどの集合住宅で多く見られます。
配管が床ではなく壁の中にあるため、階下への排水音が伝わりにくいメリットがあります。一方、工事が大掛かりになるケースもあり、設置や補修時の費用は高くなりがちです。コストをおさえるためにも、水の流れが悪いなどの違和感を感じた際は早めに専門業者に相談するのが安心です。
壁排水トイレの特徴をおさえて、快適でトラブルの少ないトイレ環境を整えていきましょう。