分離型タンク式トイレは、便器・便座・タンクがそれぞれ独立した構造のトイレです。多くの住宅や施設で使用されており、価格の手ごろさや修理のしやすさで支持されています。
この記事では、分離型タンク式トイレの特徴や仕組み、一体型タンク式トイレ・タンクレストイレとの違いをわかりやすく解説します。
目次
分離型タンク式トイレとは
分離型タンク式トイレは、今でも多くの家庭で使われている一般的なタイプです。ここでは、その特徴や仕組みを解説します。
タンク・便器・便座が独立した従来型のトイレ
分離型タンク式トイレとは、タンク・便器・便座の3つのパーツを組み合わせて設置するトイレです。この構造から「組み合わせ型トイレ」とも呼ばれています。
1980~1990年代に温水洗浄便座(ウォシュレット※)が普及したことに伴い、便座の交換が可能な分離型トイレの人気が高まりました。現在は一体型トイレやタンクレストイレが登場していますが、分離型トイレも根強い人気があります。
(※)「ウォシュレット」はTOTOの登録商標
分離型タンク式トイレの仕組みと構造
分離型タンク式トイレは、水をタンクに貯めて流す方式です。
レバーやボタンを操作すると、タンクの中にある水が一気に便器へ流れます。水が流れたあとは、自動的に新しい水がタンクに補給され、一定量たまると給水が止まり、再び使用できる状態になります。
タンクにいったん水をためてから一気に流す方式のため、高地やマンションなど水道の水圧が弱い場所でも、しっかりとした水圧で洗浄できます。
分離型タンク式トイレのメリット
分離型タンク式トイレには、次のようなメリットがあります。それぞれを詳しく解説します。
- 価格が安い
- パーツごとの交換・修理が可能
- 機能をカスタマイズできる
価格が安い
分離型タンク式トイレは、他のタイプに比べて価格が安く、設置にかかる費用をおさえられるのが特長です。
今でも多くの家庭で使われている定番タイプで、市場にもパーツが豊富に出回っているため、選べる幅も広く、予算に合わせやすいのがうれしいポイントです。
次の表では、分離型タンク式トイレと他のタイプのトイレにかかる本体価格と工事費用の目安を示しています。
トイレのタイプ | 本体価格の目安 | 工事費込みの総額 |
分離型タンク式トイレ |
5〜15万円程度 | 10~25万円程度 |
一体型タンク式トイレ |
10〜20万円程度 | 20~40万円程度 |
タンクレストイレ |
20〜30万円程度 | 25〜50万円程度 |
なお、価格は製品の機能やデザイン、メーカーによって異なります。たとえば、高機能な温水洗浄便座や、自動洗浄機能付きの便器を組み合わせると、価格が上がる傾向があります。
また、設置場所の状況によっては工事費が高くなる場合もあるため、事前に見積もりをしてもらうと安心です。
パーツごとの交換・修理が可能
分離型タンク式トイレは、水をためるタンク、座る便座、排水する便器がそれぞれ別の構造になっています。そのため、どこか一部が故障しても、その部分だけを交換・修理することができます。
一体型タンク式トイレやタンクレストイレのように、トイレを丸ごと交換する必要がないため、部品代や工事費も比較的安く抑えられます。
機能をカスタマイズできる
各パーツを自由に選んで組み合わせることができるのも、分離型タンク式トイレの特長です。選べる機能や形状にはさまざまな種類があります。以下の表は一例です。
パーツ | 形状・機能例 |
タンク |
|
便座 |
|
便器 |
|
たとえば、温水洗浄機能付きの便座を導入したり、自動洗浄機能付きの便器を選んだりと、必要な機能だけを取り入れることも可能です。また、必要最低限の機能に絞り込めば、製品購入にかかる費用を抑えられます。
分離型トイレのデメリット
分離型タンク式トイレには多くの利点がありますが、一方で注意すべき点もあります。ここではおもなデメリットを紹介します。
掃除がしにくい
分離型トイレは独立したパーツ(タンク・便器・便座)を組み合わせる構造上、接合部にすき間や段差が生まれます。埃や汚れが入り込みやすく落としにくいため、掃除の手間が多いことがデメリットです。
特に、タンクの裏側やタンクと便器の接続部分は、手が届きにくく見落としやすい場所といえます。意識的にチェックし、お手入れを心がけましょう。
タンクレスや一体型に比べてデザイン性は低い
分離型タンク式トイレは各パーツのつなぎ目や段差が目立つため、デザイン面ではタンクレストイレや一体型タンク式トイレにやや劣ると感じる人もいます。
そのため、「トイレもインテリアの一部としてこだわりたい」「生活感のないすっきり空間にしたい」といった方には、他のタイプの方が理想に近いかもしれません。
分離型・一体型・タンクレストイレはどれがいい?違いを比較
分離型・一体型・タンクレストイレにはそれぞれに特徴があり、掃除のしやすさ・修理のしやすさ、設置費用などに違いがあります。それぞれの違いは次のとおりです。
種類 | 分離型タンク式トイレ | 一体型タンク式トイレ | タンクレストイレ |
画像 | ![]() |
![]() |
![]() |
構造 | パーツごとに独立 | 便器・便座・タンクが一体化 | タンクなし |
掃除のしやすさ | △ (凸凹や隙間が多い) |
◯ (凹凸や隙間が少ない) |
◎ (凹凸や隙間がほとんどない) |
修理のしやすさ | ◎ (部分交換可能) |
△ (全体交換になる可能性がある) |
△ (全体交換になる可能性がある) |
連続使用 | × (タンクに水が溜まるまで待つ必要がある) |
× (タンクに水が溜まるまで待つ必要がある) |
◎ |
デザイン性 | △ | ◯ | ◎ |
価格帯 | ◎ (本体5〜15万+工事費) |
◯ (本体5〜15万+工事費) |
△ (本体20〜30万+工事費) |
分離型タンク式トイレはタンク・便器・便座がそれぞれ独立しており、必要に応じてパーツごとに選べるのが特長です。
これに対し、一体型タンク式トイレはタンクと便器・便座が一体化しており、見た目がすっきりして掃除もしやすいというメリットがあります。
ただし、どちらもタンクに水をためてから流す仕組みであるため、家族が続けて使用する場合には、タンクに水がたまるまでの時間が必要です。そのため、人数の多い家庭では「次の人がすぐに使えない」と感じる場面もあるかもしれません。
一方、タンクレストイレは水道の水圧で直接洗浄するタイプで、連続使用に強い反面、水圧の弱い住宅では設置できない場合があり、停電時には使えないという注意点もあります。
タイプごとに一長一短があるため、家庭の人数や使い方、設置環境に合わせて選びましょう。
分離型タンク式トイレはこのような人におすすめ
ここからは分離型タンク式トイレがおすすめの人を解説します。
- 初期費用や修理費をおさえたい方
- 必要な機能だけを選びたい方
- 将来的にパーツ交換を重視する方
- 停電時でも使えるトイレを選びたい方
分離型タンク式トイレは、コストを抑えながら自分のニーズに合ったトイレを作りたい方におすすめです。
タンク・便器・便座を別々に選んで組み合わせることができるため、「温水洗浄だけほしい」「暖房機能は不要」など、必要な機能だけを取り入れることができます。その分、不要な機能を省いて費用を抑えられるのも大きなメリットです。
また、パーツごとに交換ができるため、便座だけ新しくしたいときも、全体を買い替える必要はありません。長期的に見てもメンテナンスがしやすく、経済的です。
さらに、タンクに水をためて流す構造のため、電気を使わずに排水できます。災害などで停電が起きた際にも使えるため、非常時の備えとしても安心です。
このように、分離型タンク式トイレは、費用面・機能の柔軟性・メンテナンス性・災害時の対応力を重視したい方にとって魅力的な選択肢となります。
分離型タンク式トイレの種類
最後に、分離型タンク式トイレの種類を紹介します。
ハイタンク式
ハイタンク式トイレは、タンクを天井近くの高い位置に設置するタイプです。レバーを引くと、高い場所から水が一気に流れ出し、その勢いでしっかり洗浄できます。
設置にはある程度の高さが必要ですが、デザイン性やレトロな雰囲気を求める方に人気があります。
ハイタンク式トイレはこちらの記事で詳しく解説しています。
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隅付きロータンク式
隅付きロータンク式は、トイレの壁の隅にタンクを設置したタイプです。タンクから細いパイプを通じて便器に水を流します。タンクがやや高い位置にあるため、床まわりが広く使え、狭いトイレ空間でも圧迫感が少ないのが特長です。
省スペースで設置できるため、コンパクトなトイレに採用されています。
隅付きロータンク式トイレは、こちらの記事で詳しく解説しています。
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平付きロータンク式
平付きロータンク式は、タンクが便器背面の壁に取り付けられているタイプです。タンクと便器の間にはパイプが通っており、やや距離があります。
タンクを別の位置に配置できるため、トイレ内のスペースを有効に使える構造です。
密結ロータンク式
密結(みっけつ)ロータンク式は、タンクが便器の真上に直接取り付けられているタイプです。タンクと便器が近いため、水がスムーズに流れます。
家庭用トイレとして普及しており、交換部品も豊富で修理やメンテナンスも容易です。
まとめ
分離型タンク式トイレは、タンク・便器・便座が別々に設置された構造で、それぞれのパーツを自由に組み合わせられるのが特長です。
本体価格が比較的安く、故障時も必要な部分だけを交換できるため、長く使いたい方や費用を抑えたい方に向いています。また、電気を使わず水を流せる仕組みのため、停電時でも安心して使える点も大きなメリットです。
一方、すみずみまで掃除するには手間がかかることやデザインの面ではデメリットがあります。この点においては、タンクレストイレや一体型タンク式トイレに利点があります。
金額面だけでなく、生活スタイルや好みと合致するかどうかも含めて、理想に適うトイレを選びましょう。