寒冷地では冬の時期になると、水道管の凍結によるトラブルが起きやすくなります。トイレも例外ではなく「水が流れない」「タンクに水が貯まらない」といったトラブルが起きることもあります。
このようなトイレの凍結を防ぐには、トイレ用の不凍液を活用すると良いでしょう。適切に使用すれば、水が凍るような氷点下の気温のなかでも、トイレが凍結する心配はありません。
本記事では、トイレの不凍液の仕組みや使い方、凍結してしまったときの対処法などを解説します。冬のトイレトラブルを軽減するために、ぜひ参考にしてください。
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トイレの不凍液とは
不凍液とは、水よりも凍る温度(凝固点)が低い液体のことです。北海道や東北などの寒冷地では、トイレなど水回りの凍結対策として使われています。
排水管やタンクなどの水が凍ると「タンクに水が貯まらない」「水が流れない」など、日常の使用に影響します。また、配管の破損、水漏れのようなトラブルにもつながりかねません。トイレのタンクや便器に事前に不凍液を充填しておけば、凍結を防げます。
なお、不凍液には車用のものもありますが、こちらをトイレに使うことはできません。車用にはエチレングリコールという下水に流せない成分が含まれていることが多いためです。トイレに使用する際は、必ずトイレ用と明記された不凍液を選ぶようにしましょう。
トイレの不凍液で凍結を防止できる仕組み
不凍液は凝固点(凍る温度)が低いグリセリンやエタノールを主成分とする液体です。特にエタノールは凝固点がマイナス114度と非常に低く、冬場でも凍結しにくい性質を持っています。
事前に不凍液を便器やタンクに混ぜておくことで、水が凍ってしまうような気温でも、トイレの水回りの凍結を防止できます。
トイレの不凍液はいつ使うべき?
トイレの不凍液はすべての家庭で必要なわけではありません。次のケースに該当する場合は準備しておきましょう。
- 気温がマイナス4度以下になるとき
- トイレに凍結防止機能がない場合
- 旅行などで長時間トイレを利用しないとき
気温がマイナス4度を下回るような場合は、水回りが凍る可能性が高まるため、不凍液の使用を検討しましょう。
気温がマイナス4度以下でも、トイレに凍結防止機能(ヒーター)があれば不凍液を使用しなくても問題ありませんが、機能がない場合は不凍液を使用するのが安心です。ただし、凍結帽子機能がある場合でも、対応できる気温は製品の説明書で確認しておきましょう。
その他、旅行や出張など長期間トイレを使用しないときも注意が必要です。水が滞留すればその分、凍るリスクも高まります。冬場に1週間以上家を空けるような場合は、不凍液を充填しておくと安心です。
不凍液を使うタイミングは夜の就寝前がおすすめです。気温が下がりやすい夜や明け方の凍結リスクを減らせます。また、不凍液は水抜き後に入れるため、不凍液の充填中はトイレを使用できないことも理由です。
水抜きや不凍液の使い方については次章で詳しく解説します。
トイレの不凍液の使い方
トイレの不凍液を使う手順は次のとおりです。
- タンクの水を抜く
- ウォシュレット※の水を抜く
- 便器やタンクに不凍液を充填する
- 封水に不凍液を混ぜる
詳しく解説します。
※TOTOの登録商標。一般名称は「温水洗浄便座」。
1.タンクの水を抜く
不凍液を使う際は、まず水抜きを行います。最初に次の手順でタンクの水を抜いていきましょう。
- トイレの止水栓を閉める
- トイレのレバーを回し水を流す
止水栓を閉めることで、タンクへの水の供給を止められます。ハンドルタイプの止水栓は手で、外ネジタイプであればマイナスドライバーで時計回りに回すと栓が閉まります。
水の供給を止めたあとは、レバーを回してタンク内の水を流しましょう。この工程によりタンク内が空になります。タンクに不凍液を充填させるための下準備です。
止水栓についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
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2.ウォシュレットの水を抜く
次にウォシュレットの水を抜きます。おおまかな手順は次のとおりですが、機種によって方法が異なるため、必ずウォシュレットの仕様書で確認するようにしてください。
- ウォシュレットの電源プラグを抜く
- 本体の固定板が見えるまで本体を引き出す
- ドライバーなどでで水抜き栓を外す
- 本体の水が落ち切るまで待つ
- 給水ホース内の水を抜く
- 水抜き栓を取り付ける
- 電源プラグを差し込む
水抜きの際に、本体内から水が出てくることがあります。水を受けられるようにバケツや雑巾を用意しておきましょう。
3.タンクに不凍液を充填する
水抜きが終わった後は、不凍液を充填していきます。多くの不凍液は水と希釈して使うタイプです。気温に応じて希釈割合を調整しましょう。
不凍液の量の目安
不凍液の量は、最低気温よりも10度低い状態を想定して調整していきます。たとえば、その日の最低気温がマイナス5度なら、マイナス15度に耐える濃度に希釈します。
仮設トイレ用の商品Aの場合、気温と不凍液の希釈割合は次のように設定されています。
トイレ凍結防止剤:水 | 凍結温度 |
4:6 | -15度 |
5:5 | -21度 |
6:4 | -27度 |
8:2 | -43度 |
10:0 | -60度 |
※参照:JUKO.IN
一般的なトイレのタンクはおよそ4〜6リットルです。希釈割合が「4:6」の場合は、不凍液が1.6〜2.4リットル、水が2.4〜3.6リットルという割合になります。
実際の希釈割合は製品により異なります。ラベルやパッケージに記載された目安を確認し、定められた割合で希釈するようにしましょう。
4.封水に不凍液を混ぜる
便器の底には、下水からのニオイや害虫の侵入を防止する「封水」が貯まっています。封水が凍結するとトイレを使えないだけでなく、便器のひび割れや破損にもつながりかねません。そのため、最後に封水にも不凍液を混ぜておきましょう。
不凍液は便器に直接注ぎ入れます。割り箸などでかき混ぜると、不凍液が均等に広がります。
トイレを使用するときは、止水栓を開けタンクへの給水を再開させます。その後一度流してから使用してください。
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トイレの不凍液はどこで売ってる?
トイレの不凍液は主に次のような場所で購入できます。
- ホームセンター
- ドラッグストア
- スーパー
- 通販・ECサイト
寒冷地ではスーパーやドラッグストアなどでも販売されています。
寒冷地以外の比較的あたたかい地域では、売られている場所が限られていることが多いようです。ホームセンターで購入できる場合もありますが、店頭には置かれていないケースもあります。確実に手に入れたい場合は通販・ECサイトがおすすめです。
トイレの不凍液は他のもので代用できる?
トイレ用の不凍液が手に入らない場合、次のようなもので代用することも可能です。
- 寒冷地用ウォッシャー液
- ホワイトリカー
寒冷地用のウォッシャー液には凍結を防止する成分が含まれています。トイレ用の不凍液と同様の効果が期待できます。ただし、エチレングリコールが含まれているものは下水に流せないため、トイレには使用できません。購入前に必ず成分表示を確認しましょう。
ホワイトリカーとは、アルコール度数35度ほどの度数が高いお酒です。アルコールは凝固点が低いため、便器やタンクに混ぜて使用することで簡易的な凍結対策となります。
寒冷地用ウォッシャー液やホワイトリカーなどの代替品は、あくまでの緊急時の一時的な対策です。できる限りトイレ用の不凍液を使用するようにしましょう。
凍結してしまったときの対処法
予想外に気温が低下し、不凍液を準備できず凍結させてしまうこともあるでしょう。ここでは、トイレが凍結したときの4つの対処法を紹介します。
室温を上げる
最初に行いたいのは、トイレ空間の室温を上げることです。ヒーターなどの暖房器具を使用して、トイレ室内の温度を上げると自然解凍が促されます。
お湯にひたしたタオルを巻く
手洗い器の蛇口やタンクにつながっている給水管など、凍っている部分に40〜50度ほどのお湯にひたしたタオルを巻きつけます。タオルの熱が伝わることで、ゆっくりと凍結が溶けていきます。
タオルが冷えたら、再度お湯にひたして巻きつけ直すことを繰り返しましょう。
タオルを巻いてからドライヤーを当てる
手洗い器の蛇口などにお湯をひたしたタオルを巻き、その上からドライヤーの温風を当てるとより効果的です。
このとき、急激に配管を温めてしまうと、配管の破裂や損傷につながります。タオルから少し離し、直接配管に温風が当たらないように気をつけましょう。
ぬるま湯を流す
便器内や排水口付近に凍結が見られる場合は、40度前後のぬるま湯を少しずつ流しこんでみてください。
一気に大量のお湯を流すと溢れる恐れがあります。また、熱湯を使用すると排水管や便器が損傷する可能性があります。ぬるま湯を複数回に分けて、ゆっくり流すことがポイントです。
凍結したときのNG行動
トイレの凍結時に誤った対処をすると、配管の破損や水漏れなど、さらなるトラブルを招く恐れがあります。特に気をつけたいNG行動を2つ紹介します。
熱湯で溶かす
凍結した箇所に熱湯をかけるのは厳禁です。配管の温度や配管内の圧力が急激に変化し、破損する恐れがあります。タンクや便器などトイレ本体も同様です。急激な温度変化がダメージとなり、ひび割れや損傷が生じるかもしれません。
必ず40〜50度のぬるま湯を使い、ゆっくりと温めるようにしましょう。
排水レバーを何度も操作する
凍結して水が出ない状態で、タンクの排水レバーを繰り返し操作することもNGです。無理に給水しようとすると、水が通らない配管内に圧力がかかり、配管の破裂や破損の原因になります。
凍結が疑われる場合はレバー操作は控えましょう。まずはトイレの室温を上げる、ぬるま湯にひたしたタオルを巻くなど、適切に対処することが大切です。
まとめ
気温が氷点下まで下がるような寒冷地では、トイレの凍結を防ぐ手段として不凍液の使用が有効です。事前にトイレに不凍液を充填しておくことで、タンクや便器、配管の凍結を防げます。
使用する際は、トイレ用の不凍液を選び、説明書などに記載されたとおりに希釈することが大切です。適切に扱わないと、トイレ本体や配管の損傷につながります。
もしトイレが凍結してしまった場合は、焦らずゆっくり解凍してください。間違っても熱湯をかけてはいけません。凍結がなかなか改善されない場合は、無理をせず水回りの専門業者に相談してみるのもおすすめです。
トイレの不凍液を適切に使用して、寒い季節の水まわりトラブルを防ぎましょう。
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