トイレの種類といえば「和式・洋式」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。もちろんその区分もありますが、実は洋式の中だけでも複数の種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、住環境や生活パターンに合わせて選ぶことが大切です。
そこで本記事では、日本で設置されているトイレを種類ごとに詳しく解説します。便器や化粧室の構造、排水方式等で各種に分類しているので、ぜひ参考にしてください。
トイレのタンクと便器の構造による分類
トイレは大きく分けて、「タンク式」と「タンクレストイレ」の2種類があります。タンク式は、水を一度タンクに貯めてから流すタイプで、構造により「一体型」と「分離型」に分類されます。
一方、タンクレストイレはタンクを使わず、水道の水圧で直接流す仕組みです。「フラッシュバルブ式」と呼ばれるトイレもあります。
種類 | 一体型タンク式 | 分離型タンク式 | タンクレス | フラッシュバルブ式 |
イメージ画像 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
水洗方式 | タンクの水を流す | タンクの水を流す | 水道直結 | 水道直結 |
必要スペース | 広い | 広い | 狭い | 狭い |
手洗い器 | 備え付け | 備え付け | 別途設置 | 別途設置 |
掃除のしやすさ | 〇 | △ | ◎ | ◎ |
価格帯 (工事費込み) | 20~40万円程度 | 10~25万円程度 | 25〜50万円程度 | – |
一体型タンク式

水洗方式 | タンクの水を流す |
必要スペース | 広い |
手洗い器 | 備え付け |
掃除のしやすさ | 〇 |
価格帯(工事費込み) | 20~40万円程度 |
一体型タンク式トイレは、タンク・便器・便座が一体となっているトイレです。製品によっては温水洗浄便座機能も一体化されています。洗浄は、タンクに貯めた水を一気に流す仕組みです。水道の水圧が弱い高層マンションなどでも、安定した洗浄力を保てます。
一体化した構造の大きなメリットは、掃除のしやすさです。つなぎ目や凹凸がほとんどないため、汚れが溜まりにくく、拭き掃除も簡単に行えます。さらに、多くの製品で便器の内側にフチ裏がない「フチ無し形状」が採用されており、見えにくい部分まで清潔に保てます。
一方で、部分的な修理・交換が難しい点に注意が必要です。たとえば故障箇所が温水洗浄便座だけで、便器やタンクに問題がない場合でも、トイレ全体の交換が必要になるケースがあります。
こちらもCHECK

分離型タンク式

水洗方式 | タンクの水を流す |
必要スペース | 広い |
手洗い器 | 備え付け |
掃除のしやすさ | △ |
価格帯(工事費込み) | 10~25万円程度 |
分離型タンク式トイレは、タンク・便器・便座の3つのパーツを組み合わせて設置するタイプです。「組み合わせ型トイレ」とも呼ばれ、1980~1990年代に温水洗浄便座が普及したことで一般家庭に広まりました。
洗浄方式は一体型と同様に、タンクに貯めた水をレバーやボタンを押して流す仕組みです。水道の水圧に影響されにくく、高地や集合住宅でも安定した洗浄力を発揮します。
各パーツが独立しているため、便座やタンクのみの交換や修理が可能で、故障時の費用や手間を抑えられます。一方、パーツを組み合わせて設置する構造上、接合部にすき間や段差ができやすく、埃や汚れが入り込みやすい点に注意が必要です。
こちらもCHECK

タンクレス

水洗方式 | 水道直結 |
必要スペース | 狭い |
手洗い器 | 別途設置 |
掃除のしやすさ | ◎ |
価格帯(工事費込み) | 25〜50万円程度 |
タンクレストイレは、その名のとおり水洗用の貯水タンクがないトイレです。水道管からの水圧を直接使って洗浄する「水道直結式」の仕組みを採用しています。水をタンクに貯める必要がないため、連続して使えるのが特長です。使用する人数が多い家庭でも、待ち時間なく快適に使えます。
タンクがない分、圧迫感が少なく、空間がすっきりと広く見えるのが魅力です。掃除がしやすい点もメリットで、凹凸の少ない形状は、日々のお手入れをぐっと楽にしてくれます。
また、少ない水でもしっかりと流せる節水設計で、タンク式に比べて使用する水の量はおよそ3分の1と水道代の節約にもつながります。
こちらもCHECK

フラッシュバルブ式

水洗方式 | 水道直結 |
必要スペース | 狭い |
手洗い器 | 別途設置 |
掃除のしやすさ | ◎ |
価格帯(工事費込み) | – |
フラッシュバルブ式トイレは、レバーを押すと水道から直接水が流れ、便器を洗浄するタイプのトイレです。水道直結式でタンクに水を貯める時間が必要なく、連続して使用できるのが特長です。
また、タンクを設置するスペースが不要なため、省スペースに複数台を並べて設置することも可能です。商業ビルや駅、ショッピングモールなどの公共施設で多く採用されています。
設置には一定以上の水圧が必要で、すべての建物に導入できるわけではありません。また、使用時の音が大きくなるため、夜間の使用で音が気になる場所での導入は慎重に検討したほうがよいでしょう。
こちらもCHECK

分離型トイレの種類一覧
分離型トイレにも、タンクの形状によっていくつかの種類があります。
種類 | ロータンク式トイレ | ハイタンク式トイレ | ||
隅付きロータンク式トイレ | 平付きロータンクトイレ | 密結ロータンク式トイレ | ||
イメージ画像 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
タンクの位置 | 壁の隅のやや高い位置 | 便器のすぐ後ろの壁 | 便器のすぐ上 | 天井近くの高い位置 |
ロータンク式トイレ

ロータンク式トイレは、便器から1メートル以内の位置にタンクが取り付けられているトイレを指します。現在主流となっている家庭用トイレの多くはこのタイプに分類されます。
隅付きロータンク式トイレ

隅付きロータンク式トイレは、タンクが便器の背後ではなく、壁の隅に設置されているタイプです。この構造の特長は、トイレ内の空間を有効に使えることです。タンクを上部に設置することで、座るスペースをしっかり確保できるため、特に狭いトイレに向いています。
昭和から平成初期にかけては住宅のトイレが狭いのが一般的だったため、このタイプのトイレが多く使われていました。当時は水道の水圧が不安定な家庭も多く、重力を利用して確実に洗浄できる点が重宝されました。
現在、新しい住宅ではあまり見かけませんが、築30年以上の戸建てや団地、アパートなどでは現役で使われていることがあります。
こちらもCHECK

平付きロータンクトイレ

平付きロータンクトイレは、便器のすぐ後ろの壁に、平らで四角いタンクを直接取り付けたトイレです。使用時にレバーを回すと、タンク内の栓が開き、水が洗浄管を通って便器に流れる仕組みです。
タンクと便器が分離しているため、タンクに不具合が生じた場合、便器本体をそのまま残してタンクのみを交換できます。一方で、タンクや配管のつなぎ目に凹凸やすき間が多く埃や汚れがたまりやすいため、こまめなお手入れが求められます。
レトロな雰囲気が好みの方には、味わいのあるデザインとして親しまれています。
こちらもCHECK

密結ロータンク式トイレ

密結ロータンク式トイレは、便器のすぐ上にタンクを密着させるように設置したタイプのトイレです。「密結(みつけつ)」という名前のとおり、タンクと便器が一体のように見える構造になっています。
現在多くの家庭で使われているスタンダードなタイプで、普及率が高く、機能やデザインのバリエーションが豊富です。シンプルなモデルから多機能タイプまで、幅広い製品があります。
便器とタンクが密着して設置されていますが、実際には多少の段差や継ぎ目などの隙間があります。タンクと便器・便座の接合部などの凸凹部分にほこりや汚れが溜まりやすく、こまめな清掃が必要です。
こちらもCHECK

ハイタンク式トイレ

ハイタンク式トイレは、天井近くの高い位置にタンクを設置し、その高さを活かして水を勢いよく流す仕組みのトイレです。タンクと便器は長いパイプでつながっており、鎖やレバーを引くことで水が一気に流れます。
この構造は、昭和50年代半ばごろまで、一般家庭や学校、公共施設などで広く使われていました。現在は大手メーカーで一部製品が販売されており、専門ショップでは海外製のクラシックなデザインも取り扱っています。
設置する際は、タンクを設置するための天井高と、給排水の配管スペースが必要です。一般的なロータンク式に比べると工事の手間がかかりやすく、費用も高くなる傾向があります。
こちらもCHECK

[st-myblock id=”73″]
化粧室の構造による分類
トイレは、空間の広さや使い勝手をふまえて選びましょう。ここでは化粧室の構造による種類を解説します。
種類 | 一般的なトイレ | システムトイレ |
イメージ画像 | ![]() | ![]() |
主な構成 | 便器+タンクまたはタンクレス | 便器+手洗い器+収納+キャビネット |
特長 | 省スペース・設置が容易 | 空間全体をトータルに設計可能 |
設置に必要なスペース | 狭くても可 | 広さが必要(幅は750mm以上、奥行は1,160mm以上が目安) |
一般的なトイレ
一般的なトイレとは、タンク式(一体型・分離型)やタンクレスタイプなど、住宅で広く採用されている標準的なトイレを指します。これらのトイレは設置には広いスペースを必要としないため、多くの住宅に取り入れやすく、使いやすい基本機能がそろっています。
システムトイレ

システムトイレとは、便器や手洗い器、収納キャビネットなど、トイレ空間全体を一体的に設計したタイプのトイレです。
システムトイレの最大の魅力は、空間を自分好みにデザインできることです。収納のカラーや材質も豊富に選べるため、たとえばナチュラルな木目調で温かみを出したり、白を基調にして清潔感のあるモダンな印象にしたりと、理想のトイレ空間を演出できます。
設置には一定以上のスペースが必要です。一般的に、室内の幅は750mm以上、奥行は1,160mm以上が目安とされています。製品ごとに必要な寸法や仕様が異なるため、メーカーのカタログや仕様書を確認し、自宅のトイレ寸法を測っておくと安心です。
こちらもCHECK

トイレの排水方式による分類
トイレの排水方式には、床排水と壁排水があります。ここでは、それぞれの方式を解説します。
方式 | 床排水 | 壁排水 | 汲み取り式 |
イメージ画像 | ![]() | ![]() | ![]() |
排水方法 | 床下の排水管に流す | 壁の中の排水管に流す | 地中の便槽にためる |
主に採用されている建物 | 一戸建て・マンション(主流) | 床下空間がない集合住宅など | 下水道未整備地域の住宅など |
床排水

床排水とは、排水管が床に接続されている排水方式で、流した水が便器の真下にある排水管から排水されます。この排水方式は、戸建て住宅やマンションなど多くの家庭で採用されています。
排水管が床下に垂直に設置されていることで排水力が安定し、少ない水でも効率よく流せるため、節水につながります。
一方で、劣化や漏水などのトラブルに気づきにくい点に注意が必要です。見えない場所で異常が進行している可能性があるため、定期的な点検を行うことが大切です。特に築年数が経過している住宅では、定期的に床下の状態をチェックすることをおすすめします。
こちらもCHECK

壁排水

壁排水とは、便器から出た排水を、壁の中に設けた排水管に流す方式です。日本では床排水が主流ですが、建物の構造によっては壁排水が採用されている住宅もあります。特に、床下に十分なスペースが確保できない建物で活用されることが多い方式です。
壁排水は排水管が壁の中にあり、外から見えません。床を通じて階下に排水音が響きにくいのが特徴で、夜間の使用やマンションの上階にあるトイレでも、音を気にせず使えます。
設置には壁への穴あけなどの工事が必要です。床排水よりも施工の手間がかかるため、工事費用は高くなる傾向があります。また、配管トラブルが発生した場合、壁を一部解体して点検や補修を行う必要があります。
こちらもCHECK

汲み取り式

汲み取り式トイレは、水道や下水道に接続されていない独立した構造のトイレです。排泄物は、便器の下に埋設した「便槽(べんそう)」と呼ばれるタンクに直接たまります。
排泄物が落ちる際の音にちなんで、ぼっとんトイレやぼっとん便所と呼ばれることがあります。便槽が満杯になる前に、専門業者に依頼して定期的な汲み取りが必要です。
このトイレの特徴は、水や電気を必要としない点です。断水や停電など非常時でも使用できるため、災害対策としても重宝されています。一方、悪臭や衛生面が気になりやすいことや、汲み取りに手間と費用がかかる点は注意が必要です。
こちらもCHECK

トイレの種類を理解しよう
トイレには、構造や排水方式の違いによって多くの種類があることがわかりました。
タンクの有無によって「一体型」「分離型」「タンクレス」「フラッシュバルブ式」に分かれ、分離型にはさらにロータンク式やハイタンク式などのバリエーションがあります。
また、排水方式には床排水・壁排水があり、地域や建物の構造に応じて採用されています。汲み取り式トイレも、今なお一部で使われています。
こうした違いを知っておくことで、今使っているトイレの仕組みを理解でき、不調や交換時の判断にも役立ちます。暮らしに密接した設備だからこそ、種類と構造をこの機会にしっかり確認しておきましょう。
[st-myblock id=”73″]